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19世紀後半以降、鉄道が軍事的に重要な意味を持つようになった。鉄道網が整備された国々では、平時には徴兵制度を施行して国民に訓練を施し、戦時には鉄道を使って国民を総動員することで、短期間のうちに国境線に大部隊を集結させることが可能となった。総動員下令のタイミングが遅れれば戦争の敗北に直結しかねないと考えられたため、列強の参謀本部は鉄道ダイヤまでを含む綿密な戦争計画を研究した。
戦術的には鉄道は防御側を優位に立たせる効果を持った。攻撃側の歩兵部隊が徒歩でしか前進できないのに対し、濃密な鉄道網を持っていたドイツやフランスは、防御側に立ったときには圧倒的に速い速度で予備兵力を集結させることができたのである。タンネンベルクの戦いでは、東プロイセンに進攻してきたロシア軍に対し、ドイツ軍は鉄道輸送を効果的に活用することで各個撃破に成功している。
さらに、19世紀後半以降、歩兵は射程距離の長いライフル銃を装備するようになった。これにより弾幕射撃の威力と精度が増し、ナポレオン戦争の時代まで勝敗を決する地位を占めてきた騎兵突撃が無力化された。一方で、第一次世界大戦において初めて本格的に投入された飛行機、戦車などの攻撃的兵器は、性能や数量がいまだ不十分であり、戦場において決定的な役割を果たすまでには至らなかった。第一次世界大戦における戦場の主役は、攻撃においても防御においても歩兵だった。
このような防御側優位の状況の中、西部戦線では塹壕戦が生起した。スイス国境からイギリス海峡まで延びた塹壕線に沿って数百万の若者が動員され、ライフル銃や機関銃による弾幕射撃の前に生身の体をさらした。こうして、それまでに行われた国家間の戦争に比べ、死傷者の数が飛躍的に増加した。また、塹壕戦を制する目的で、第一次世界大戦では初めて毒ガス兵器が使われた。開戦時にイギリス海軍大臣だったウィンストン・チャーチルは、「第一次世界大戦以降、戦場から騎士道精神が失われ、戦場は単なる大量殺戮の場と化した」と評した。