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立川宿舎の各号棟の構造及び出入口の状況、その敷地と周辺土地や道路との囲障等の状況その管理の状況等によれば、各号棟の1階出入口から各室玄関前までの部分は、居住用の建物である宿舎の各号棟の建物の一部であり、宿舎管理者の管理に係るものであるから、居住用の建物の一部として刑法130条にいう「人の看守する邸宅」に当たるものと解され、また、各号棟の敷地のうち建築物が建築されている部分を除く部分は、各号棟の建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、これが各号棟の建物の付属地として建物利用のために供されるものであることを明示していると認められるから、上記部分は、「人の看守する邸宅」の囲にょう地として、邸宅侵入罪の客体になるものというべきである(最判昭和51年3月4日(東大地震研事件)参照引用)とし、刑法130条前段にいう「侵入し」とは、他人の看守する邸宅等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうものである(最判昭和58年4月8日(大槌郵便局事件)参照引用)ところ被告人らの立入りがこれらの管理権者の意思に反するものであったのは事実関係から明らかであるとし、被告人らの本件立川宿舎の敷地及び各号棟の1階出入口から各室玄関前までへの立入りは、刑法130条前段に該当する。なお、被告人の立入行為により管理者からその都度被害届が提出されていることなどに照らすと、法益侵害の程度が極めて軽微なものであったなどということもできず、可罰的違法性は認められるとしている。
そして、表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならず、被告人らによるその政治的意見を記載したビラの配布は、表現の自由の行使ということができる。しかしながら、憲法21条1項も、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない(最判昭和59年12月18日(吉祥寺駅ビラ配布事件)参照引用)。
本件では、表現そのものを処罰することの憲法適合性が問われているのではなく、表現の手段すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に管理権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われているところ、本件で被告人らが立ち入った場所は、防衛庁の職員及びその家族が私的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり、自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として管理していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。したがって、本件被告人らの行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない(最大判昭和43年12月18日(大阪市広告物条例事件)、最大判昭和45年6月17日(軽犯罪法ビラ貼り事件)引用)。