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しかし部族ごとの軍事行動は効率が悪く、周辺民族のようにイスラエルも王制化に踏み切って成功する<ref>山我哲雄著 『聖書時代史 旧約篇』 岩波書店〈岩波現代文庫〉 2003年、ISBN 4-00-600098-7、pp.67-80</ref>。ことにダビデは政治力を発揮して、南部部族と北部部族の中間に近いエルサレムに首都をおいた。エルサレムは元来モアブ人の都市であり、どの部族の聖所とも無縁だったので中立政策を立てやすかったのである。さらにダビデはヤーウェ宗教の統合の象徴ともいえる「契約の箱」をエルサレムに運んで安置し、エルサレムをヤーウェ宗教の中心地にした<ref>山我哲雄著 『聖書時代史 旧約篇』 岩波書店〈岩波現代文庫〉 2003年、ISBN 4-00-600098-7、pp.81-83</ref>。さらにソロモン王は神殿を造営してそれを確固たるものとした。
カナンの地は交通の要衝を占めていたので、ダビデ・ソロモン王朝は交易で富を得たと考えられている。しかし、旧約聖書で繰り返し描かれるソロモンの栄華も、当時の外国の資料で言及しているものは発見されていない<ref>山我哲雄著 『聖書時代史 旧約篇』 岩波書店〈岩波現代文庫〉 2003年、ISBN 4-00-600098-7、p.94</ref>。
カナンへの定住と、首都エルサレムの建設は、イスラエル人の文化に大きな変化をもたらしたと考えられる。都市の生活と周辺の地中海文明との接触は、知識階層を生み出し様々な文書が書かれる事になった。旧約聖書に収められた箴言やコヘレトの言葉などの知恵文学の成立にしても、神話や伝承、歴史の編纂、詩篇や雅歌の編纂が始まったのも、都市文化の成立が背景にある。
しかしながら、イスラエル人の神は元来「奴隷の家から解放する神」であり、人間が人間を支配することを認めない神であった<ref>山我哲雄著 『聖書時代史 旧約篇』 岩波書店〈岩波現代文庫〉 2003年、ISBN 4-00-600098-7、p.67</ref>。また、モーセの律法はもともと半遊牧生活を前提としたものである。そこに持ち込まれた王政と都市生活はヤーウェの宗教に緊張関係をもたらした。この時代以降、預言者が現れてその時代ごとの王の政治を批判するというパターンが繰り返されることになる。