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4.機関
4.3.コーポレート・ガバナンス
株主の保護
株主の利益を保護するためのコーポレート・ガバナンスの仕組みとしては、法制上又は実務上、次のようなものが設けられている。
- 取締役の選任・解任権
- 所有と経営が分離した会社では、株主が取締役を選任・解任することにより間接的に会社の経営をコントロールすることとされており、取締役の選任・解任は株主の利益を保護するための最も基本的な手段である<ref>Kraakman et al. (2004: 34)。</ref>。
- 各国とも、株主には取締役の選任権が与えられている(ただしドイツでは労働者が監督取締役会の半数までを選任する権限がある。また、オランダでは株主には取締役の選任権がなく、監督取締役会自身が後任者を任命する)<ref>Kraakman et al. (2004: 34-36)、日本につき1項。</ref>。
- 任期中の解任については、イギリスやフランスでは株主の多数で理由を付さずに取締役を解任することができる。日本も、株主の過半数が出席した株主総会において、過半数で取締役を解任することができ<ref group="注釈">ただし、定款によって、定足数は3分の1以上の割合と、議決に必要な表決数は過半数以上の割合と定めることができる(。</ref>。
- 株主総会における投票制度
- 株主総会での投票の方法は、議決権行使を通じたコーポレート・ガバナンスのあり方に大きな影響を与える<ref>Kraakman et al. (2004: 41) 参照。</ref>。
- 日本では、議決権を有する株主数が1000人以上の株式会社は書面投票制度を設けなければならない。フランスでも、銀行等に株式を預託している中小株主には書面投票が認められているが、手続が複雑であまり利用されていないといわれる<ref>Kraakman et al. (2004: 42)。日本につき神田 (2009: 171)、2項。</ref>。
- アメリカ、イギリス等で一般的なのが、株主からの委任状集め (proxy solicitation) である。反対派がいない場合は経営陣が委任状を集め、反対派がいる場合は現経営陣と反対派との間で委任状獲得戦 (proxy contest) が行われる。アメリカでは実際に委任状獲得戦を行うには多額の費用がかかる上、証券取引委員会 (SEC) の複雑な規制に従わなければならないため、実際に委任状獲得戦が行われることは少ないが、経営陣の情報開示など、反対派が活動しやすいような制度が整備されている。また、アメリカやイギリスでは、年金ファンド、投資信託といった機関投資家が、株式市場への影響力を背景に経営の達成度について意見を述べることが増え、コーポレート・ガバナンスの上で果たす役割も大きくなっている。<ref>Hamilton (2000: 397-99, 404-05, 411)、Kraakman et al. (2004: 42-43)。</ref>。
- ヨーロッパ大陸諸国では、上場会社であっても、大株主が会社を支配していることが多く、そこでは中小株主から株式を預託されている金融機関(銀行や信託)が委任状の管理について大きな役割を果たしている。ドイツでは、銀行が、顧客である中小株主から株式を預かり、議決権を代理行使することが多く、経営陣に与した投票を行うことが多い。フランスでも、経営陣が銀行等の金融機関と協力して白紙委任状を集めることができ、経営陣の地位は比較的安定している<ref>Kraakman et al. (2004: 41-44, 46)。</ref>。
- 重要な判断に対する株主の関与
- アメリカでは、所有と経営を比較的厳格に分離しており、株主が経営について直接判断することに慎重である。アメリカの多くの州では、定款の変更、合併・統合、解散、重要資産の売却等には株主の承認が必要とされているが、株主からこれらの事項を提案することはできず、またその他の事項について株主が判断することも認められていない<ref>Hamilton (2000: 241-)、Kraakman et al. (2004: 47)。</ref>。
- ドイツでは、株主には定款の変更や合併について承認権があるほか、取締役会に対しこれらの措置をとるよう要求することができる。また、制定法に明示的に定められたもの以外にも、重要な事項について判断する権限があるというのが判例である。日本、フランス、イギリスでは、取締役会が反対する場合でも、少数株主が定款変更などの株主総会決議を提案することができる。<ref>Kraakman et al. (2004: 47)。日本の株主提案権につき神田 (2009: 168-169)。</ref>。
- 取締役会の中立性の確保
- アメリカでは、2001年のエンロン破綻を機に、主な証券取引所は、独立取締役が取締役会や委員会の多数を占めることなどを要求するようになり、また証券取引委員会 (SEC) も、公開会社について、監査委員会に独立の財務専門家を置いているか(置いていないとすればその理由)を開示することを求めるようになった<ref>Kraakman et al. (2004: 38-39)。</ref>。
- また、イギリスやアメリカでは、経営の最高責任者であるCEOと取締役会の会長(議長)が分離され、取締役会会長は非従業員が務めるのが一般的である<ref>Hamilton (2000: 410)、Kraakman et al. (2004: 50)。</ref>。
- 報酬によるインセンティブ
- アメリカでは、ストック・オプションの付与など、経営者の報酬を株主価値の増大に連動させることで経営者に対するインセンティブを与えることがあり、その他の国でもこれにならう会社がある<ref>Hamilton (2000: 414-15)、Kraakman et al. (2004: 51)。</ref>。
- 取締役の注意義務・忠実義務と損害賠償責任
- 取締役は、会社に対し、24巻6号625頁・最高裁判例検索システム)、学説では両者は別の概念であるとする見解が有力である。神田 (2009: 203-204)。</ref>。
- 注意義務は、取締役が故意又は過失によって会社に損害を与えることを禁じるものであり、これに違反したときは取締役は会社に対し損害賠償責任を負う。しかし、事後的に経営判断の是非を評価することは難しいこと、過度に厳格な責任を負わせると取締役に萎縮効果が生じることから、取締役の経営判断に対しては広い裁量を認めるのが各国の傾向である。裁判所は経営判断に事後的に介入しないという経営判断の原則がアメリカの判例上認められており、日本の裁判例でも同様の判示がされている<ref>神田 (2009: 203-204)、Kraakman et al. (2004: 52)。</ref>。
- 忠実義務は、自己又は第三者の利益を会社の利益よりも上位に置いてはならないという義務である。特に、(1)会社と取締役の間の財産の譲渡、会社から取締役への金銭の貸付けなどの利益相反取引、(2)取締役による競業については、取締役が自己又は第三者の利益を図って会社の利益を犠牲にするおそれがあるため、規制が設けられている<ref>神田 (2009: 204-210)、Kraakman et al. (2004: 52)。</ref>。
- 取締役がこれらの義務に違反した場合、会社が取締役に対し損害賠償請求を行わないときは、株主が会社に代わって取締役を訴えることができる制度が設けられている。これを''')。</ref>。
- 内部統制システムの整備
- 内部統制システムとは、財務報告の信頼性、業務執行の効率性、コンプライアンス(法令遵守)を確保するための体制をいう<ref></ref>。日本の新会社法では、大会社については取締役会で内部統制システム(リスク管理体制)<ref group="注釈">日本の会社法上は業務の適正を確保するための体制と呼ばれている。</ref>構築の基本方針を決定しなければならないこととされた<ref>神田 (2009: 193, 205-06)、概要・第2の3(2)。</ref>。
- 証券市場の役割と企業買収
- 上場会社の場合、株価は会社の経営成績を評価して絶えず変動する。株価の下落・低迷は、最終的には経営者(取締役、執行役員)の解任につながるため、経営者に、株主の利益に反する(株価の下落につながる)行動を控えさせる効果がある。また、証券取引法制や証券取引所の規則によって要求される情報開示 (disclosure) も、コーポレート・ガバナンスに寄与している<ref>Hamilton (2000: 416)、Kraakman et al. (2004: 52)。</ref>。
- 同時に、証券市場(株式市場)を通じて行われる企業買収 (M&A) は、コーポレート・ガバナンスの上で非常に重要な役割を果たしている。
- アメリカでは、1980年代に企業買収がさかんに行われた。このような企業買収(特に現経営陣の意思に反して行われる敵対的買収)には否定的評価もあるが、買収による企業の再構築によって不採算事業への過剰投資が削減され、株主だけでなく社会全体も産業の効率化による利益を得たとの指摘がされている<ref>岩田 (2007: 49-58)、Hamilton (2000: 417-18)。</ref>。
(出典:Wikipedia)
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