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初めて社会的な要因からの自殺の研究を発表したのは、エミール・デュルケームの『自殺論』である。自殺を罪という側面からしか見ることがなかったキリスト教的価値観とは一線を画すものであった。
自殺の動機となる要因として、
が挙げられている。基礎にこれらの要因が存在するところに、何らかの誘因が加わって、自殺が実行される。
社会要因については、デュルケームが、『自殺論』の中でさらに4つの要因に類型化している。
デュルケームに続き別の面から重要な考察を行ったのはフロイトである。彼は長らく人間の心理を「生の欲動(リビドーまたはエロス」で説明しようとしたが、晩年近くになり説明できない破壊衝動を見出し、後にそれを「死の欲動(デストルドー、またはタナトス)」と名付けた。彼は生を「生の欲動」と「死の欲動」との闘争、さらには愛憎混じった感情の転移であるなどの思索をしたが、誤りを含んでいるという指摘が強い。しかしながら自殺者の心理剖検に対し一定の貢献があったと臨床の現場では受け止められていることもある<ref>この臨床例は、熊倉伸宏『死の欲動―臨床人間学ノート』新興医学出版社、2000年 ISBN 4-88002-423-6 などに詳しい。</ref>。
政治的にその混乱と困窮の度合いがあまりにも高い場合(戦争など)では、自殺はあまり見られないとされる。生きること自体にまず最大の関心が向けられているからである。また、経済的に拡大途上にあり、様々なチャンスの多い国でも少ない。自殺が多いのは、元は経済的に豊かであったのが、不況になり失業や就職難が深刻になった、あるいは他人の幸福を目の当たりにしながら、自分だけがそれに手を伸ばすことができないといった絶望的な状況にあるなどの国々である。前者はバブル崩壊後の日本、後者はハンガリーなど元東側諸国の国々などが例として挙げられる。要すれば、絶対的幸福よりも相対的幸福を感じられない人々が自殺しやすい状況にあるといえる。
こうした国の経済、社会、文化、宗教などでの違いは見られているものの、自殺の大きな要因として近年あげられるのは、うつ病などの精神疾患との因果関係である。現に、警視庁による発表ではうつ病による自殺が27.6%と最も多い。自殺既遂者の95%は何らかの精神疾患を患っていて、その大半が治療可能だったという研究結果もある<ref>トーマス・E・エリス, コリー・F・ニューマン(著), 高橋祥友(訳), 自殺予防の認知療法―もう一度生きる力を取り戻してみよう, 日本評論社, 2005, p. 16.</ref>。これらは慢性に経過するものから、強いストレスによって急激に発生するものまであり、自殺者や自殺志願者に対応する際、心得なければならない疾患の一つとしてしばしば注目される。
このような精神的危機の背景には、激しい競争社会や、低い自己評価に起因するさまざまな否定的感情、家庭、職場での生活が困難など複数の要因がある。
ドラッグや麻薬の広まっている地域では酩酊している状態で正常な判断能力を失っているうちに、ビルの上から飛び降りたり、自動車や列車に飛び込んで自殺をしてしまうこともある(この場合、自殺ではなく、事件や事故と取る場合もある)。例えば「夜回り先生」こと水谷修が麻薬・薬物を撲滅しようとするきっかけとなったのは、横浜市で定時制高校の教員を勤めていた頃、当時の生徒がシンナーで酩酊状態にあった時にダンプカーに飛び込み、死亡したことであったという<ref>水谷修「夜回り先生」</ref>。