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『レット・イット・ビー』でのアレンジを高く評価したレノンはビートルズ末期のシングル「インスタント・カーマ」に続いて、ソロ前期『ジョンの魂』『イマジン』ではプロデューサーにフィル・スペクターを起用した。スペクターは、ストリングスを用いた厚い音による編曲が特徴で、「音の壁(Wall Of Sound)」で知られている。しかし、両作品ともアレンジはそれとは異なり、レノンの目指すシンプルな音作りがなされた。
ソロ後期の『マインド・ゲームス』『心の壁、愛の橋』『ロックンロール』、復帰後の『ダブル・ファンタジー』では、セルフ・プロデュース(『ロックンロール』では一部をフィルスペクターが担当、『ダブル・ファンタジー』はジャックダグラス、ヨーコが共同プロデュース)により共演者に敬意を払いながらセッションの中でアレンジを組み立てていった<ref name"全曲解説">シンコーミュージック刊:ジョン・レノン全曲解説 ジョニー ローガン (著), Johnny Rogan (原著), 丸山 京子 (翻訳)</ref>。 これが、共演者の敬意を得ていたという多くの発言(デビッド・スピノザ、トニー・レヴィンなど)があることはレノンの人柄を忍ばせる<ref>シンコーミュージック刊:ギターマガジン、トニーレヴィン特集、インタビュー所収記事</ref>。 マインド・ゲームスに参加したスピノザによれば、レノンはスタジオミュージシャンを使って基本ラインを録音したあと、レノン自身のギター、スライドギターなどによる音を緻密に重ねてオーケストレーションを造り出し<ref>シンコーミュージック刊:ギターマガジン、ジョンレノン特集、スピノザ・インタビュー所収記事</ref>、アダルト・オリエンテッド・ロックの先駆となった<ref>ミュージックマガジン刊:レコードコレクターズ2002 vol.12, No.12, 96ー99サエキけんぞう</ref>。 ビートルズ以来の作曲語法となったベースのクリシェ<ref>ビートルズ音楽論―音楽学的視点から、田村和紀夫著</ref>、分散和音的なアプローチも取り入れている。『心の壁、愛の橋』ではストリングス、ホーンも多用した編曲を行った。
また、エコーを効かせた「インスタント・カーマ」「マザー」「愛の不毛」「スターティング・オーヴァー」などの作品は、レノン自身が中音域における豊かな声質の再現、倍音の効果を意識していたことが伺える<ref>ビートルズのつくり方」1994 山下邦彦 著</ref>。
== ポール・マッカートニーとの関係== ビートルズ後期及び解散後におけるマッカートニーとの確執が、二人の関係を語る上で頻繁に取り沙汰される。確かにビートルズ解散直後しばらくは互いの楽曲中で中傷しあう<ref>『ラム』でのマッカートニーのレノンへの皮肉は『イマジン』における『ラム』のパロディー、「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ」におけるマッカートニー作品が軽音楽のようだという歌詞、『ウィングス・ワイルド・ライフ』における「ディア・フレンド」がレノンを指すなど</ref>深い確執が存在したが、ビートルズのアラン・クレインとのマネージメント問題、アップルレコードの管理など一連の訴訟が解決に向かう中、1970年代も中頃になると、マッカートニーが自分のバンド「ウイングス」でアメリカ・ツアーを行なった際には時折レノンのもとを訪れるなど親交を取り戻すようになった。また1974年にはスティーヴィー・ワンダーらとともにジャム・セッションを行ない、「スタンド・バイ・ミー」や「ルシール」などロックンロールのスタンダードを一緒に演奏したテープも残されている。
またレノンは「ポールは弟であり、彼との確執は『兄弟ゲンカ』みたいなもので、他の奴にとやかく言われる筋合いはない」というスタンスを保ち続けていた。マッカートニーを卑下する発言をする者に対しては「ポールの悪口を言っていいのは俺だけだ。他の奴が言うのは許さない」と発言している。レノンとは飲み友達でオノとの別居中は共同生活を送っていたハリー・ニルソンや秘書・メイ・パンにでさえ、マッカートニーの悪口を言うことは許さなかったという。またレノンは「人生のうちで2回、すばらしい選択をした。ポールとヨーコだ。それはとてもよい選択だった。」<ref>ジョンレノン 愛の遺言」(講談社1980年12月8日収録インタビュー、1981年刊行)</ref>、また「俺が音楽業界で達成した偉業はひとつ。『ポール・マッカートニー』を発掘したことだ」とも発言している。
1980年のマッカートニーのヒット曲「カミング・アップ」が、レノンに音楽活動を再開させる切っ掛けになったとも言われる。一方、マッカートニーは90年代に入ってレノンの「平和を我らに」、ビートルズ時代はレノンがボーカルを担当した「ヘルプ!」「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」「カム・トゥゲザー」などをカバーして、全世界のファンの胸をうった。