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広島、長崎の被爆者の追跡調査データから、200mSv以上の被曝については被曝線量と発ガンの確率が比例していることが分かっている。それ以下の領域については、50mSv以上の急性被曝については被曝線量と発ガンの増加が関連しているらしいことが知られているが、相関関係は明瞭でない。ある因子が健康に影響を与えているかどうかを検証するのは疫学の範疇であるが、放射線以外の理由によるガンが一定数ある中で、それより少ない数について影響があったのか無かったのかを疫学的・統計学的に確認することは極めて難しいためである。
原子力と放射線の利用を管理する上では、保守的な側(最も慎重な立場)を採用するという考え方から、疫学的に実証が難しい極めて低い線量についても線量と確率的影響の確率は比例すると考えるのが直線しきい値なし(LNT)モデルと呼ばれる仮説である。LNTモデルはICRP勧告第26号(1977年)において、人間の健康を護る為に放射線を管理するには最も合理的なモデルとして採用された。なお、各国の国内規制もICRPの勧告に準じていることが多い。
この勧告では、個人の被曝線量は、確定的影響については発生しない程度、確率的影響についてはLNTモデルで計算したリスクが受容可能なレベルを越えてはならず、かつ合理的に達成可能な限り低く(as low as reasonably achievable, ALARA)管理するべきであり、同時に、被曝はその導入が正味の利益を生むものでなければならないことを定めている。
しかし、この仮説を墨守することに対しては批判もある<ref>金子正人「疫学研究の現状としきい値問題」(LNT仮説を否定する側の論者の主張)</ref>。「これ以下なら確率的影響の確率が全く増加しないというしきい値を持たない」、というこの仮説の特性は、原子力と放射線の利用に反対するグループの宣伝材料として利用された。この結果、原子力と放射線のパブリックアクセプタンスを遅滞させたばかりか、医療の上で必要な放射線利用に対しても患者が恐怖感を抱きあるいは拒否するという事態も発生し、医療の現場に混乱が生じた。また、チェルノブイリの事故の際には、殆ど考慮の必要が無いとの意見もある極微量の実効線量の増加であるにも関わらず、妊娠中の胎児を中絶してしまう者が続出するなど、放射線に関する知識を持たない人々を、必要以上に怖れさせる結果を招いているとの批判もある。
一方、逆の立場からの批判もある。欧州緑の党が設立した欧州放射線リスク委員会 (ECRR) は2003年勧告の中で、セラフィールド再処理施設の小児白血病の発生率がICRPの基準からの予測値より100倍以上多いと報告している。その上で現在のLNT仮説は内部被曝や低線量の被曝を過小評価しているため、放射線防護基準はICRPの基準より少なくとも10倍厳しくするべきだと主張している<ref>ECRR2003年勧告の要約 翻訳は美浜の会による</ref>。