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ケインズは、「需要によって供給が決定される」という有効需要の原理を提唱した。これはリカードらが主唱していたミクロ的な経済観(古典派経済学)への批判であり、セイの法則に見られる「供給によって需要が決定されるのであり、供給を強化さえすれば需要(購買力)も増大する」という楽観的な観測の現実的な妥当性の否定であった。
ケインズのマクロ的な経済観では、国民所得が、経済全体でみた総需要によって決定されると考えられる(有効需要の原理)。もしも総需要が十分でなければ、結局のところ、国家全体の生産力も減少させてしまうことになる。そのため、経済全体でみた総需要の不足は、これを政府の実施する金融財政政策によって解消することが必要であるとした。ただし、産業の国有化は否定し、また個々の全ての経済活動が管理され、統制されるべきとする考え方には与しなかった。
ケインズは、流動性選好(流動性の罠)、あるいは利子率の下限の存在や企業の期待利潤率の変動などの影響から、金融政策の有効性が失われた場合には、財政政策によって総需要の不足を克服できるという主張を展開した。今ではアメリカを含めた全ての資本主義国家で、財政出動による景気対策(軍事ケインズ主義などもこれに含まれる)が行われていることも周知の事実である。
ケインズは資本主義社会を構成する階級として、資金を供給する投資者階級、労働力と資金を需要する企業者階級、労働力を供給する労働者階級の三つのクラスが存在するとした独特の階級観を有していた。ケインズは企業者階級を代表した自由党の支持者として、「金利生活者の安楽死」という表現に見られるように、投資者階級から企業者階級への支配権の交替を求めていたが、しかし労働者階級と企業者階級との格差については、これを単なる能力の格差による必然的な格差と捉えていた(ビジネス・デモクラシー)<ref>『ケインズ:“新しい経済学”の誕生』伊東光晴岩波書店</ref>。