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大日本帝国憲法は第4条で天皇を元首と規定した。一方、日本国憲法やそのほかの法律には、天皇を元首とする規定がない(そもそも元首が誰であるかの規定さえない)。ただ、元首の案件とされる国事行為についての規定はある。
しかし、前節で述べたとおり、他の民主制国家と同様「主権在民」を謳っている日本で、憲法第1条によって「象徴」となる以外、国政における一切の権能を有さないと定められた天皇がなおも「元首」「君主」であるのか否か、言い換えれば、そもそも日本国憲法の下における元首は誰かについて議論がある。
まず、天皇が「君主」かどうかの点について。
天皇が「君主」かどうか、の議論は、日本国がどのような政治制度をとっているか、という議論と結びつきやすい。天皇が「君主」ならば、日本国の政治制度は立憲君主制であると理解するのが自然ということになる。他方で、天皇が「君主」でないならば、日本国には君主は存在しないので、日本国の政治制度は共和制であると理解するのが自然ということになる<ref>松井茂記『日本国憲法(第2版)』(有斐閣)</ref>。
天皇が「君主」かどうかを考えるにあたっては、そもそもいかなる特質を備えていれば「君主」といえるかがまず問題となる。憲法学者である清宮四郎は、君主かどうかの標識として、
- 1.単一人で構成する機関であること。
- 2.地位が世襲であること。
- 3.地位に伝統的な威厳が伴っていること。
- 4.統治権のうち少なくとも行政権の一部を担当すること。
- 5.象徴的機能を有すること。
- 6.対外的に国家を代表すること。
- 7.自己の行為について責任を負わないこと。
を挙げている。天皇は、4と6の特質を備えていないが、残りは備えているから、清宮四郎は、天皇を君主といっても「あえて誤りというべきほどのものではない」としている。一方、同じく憲法学者の宮沢俊義は、ほぼ同じような標識から判断して、4と6の特質を備えていないから、天皇は君主ではないとしている。
また、日本国を共和国であるとする代表的な論者である憲法学者の松井茂記は、上記のような標識を直接には用いずに、憲法は天皇を君主として定めておらず、また天皇は象徴としての地位しか有せず国政に関する権能を一切有さないのであるから、天皇を君主と呼ぶ事は困難であるとしている。
次に、天皇が「元首」かどうかの点について。